こんにちは。ドローン操縦士のここしょー(@cocoshooo)です。

ドローンを操縦する際に切っても切り離せないのが、法令関係です。空を飛んでいるモノは必ず落ちます。上からモノが落ちれば、物損やケガなどのリスクが伴います。

そこで、事故がなく安全に運航がなされるよう、国は様々な法律などでドローンの飛行を規制しています。操縦者はこれらの法令を順守することが求められています。そこで、今回は、ドローンを巡る法令について操縦者ともっとも密接に関係している「航空法」について整理してみます。

航空法とは

ドローン操縦ともっとも密接に関係している法令が、航空法です。航空法は、航空機の航行の安全など、空の秩序を守るため、 1952年(昭和27年)に制定された法律です。航空法制定当時は、今のような小型無人機(ドローン)はありませんでした。もともとはアメリカで軍事目的に開発が始まったドローンですが、日本では1980年代に農薬散布用の無人ラジコンヘリが使われるようになったのが始まりとされています。

2010年にParrot社(仏)がドローン”AR. Droneを発表したことで、ドローンという存在が一気に身近なものに。これをきっかけに、日本でもドローンユーザーが少しずつ増えていくことになります。

当時の航空法は、当然ですが「ドローン」というものが想定されておらず、法律上では無線操縦の模型やおもちゃと同じ「模型航空機」という扱いを受けていました。当時の航空法では、航空機の飛行に支障が出る空港周辺(半径約9km以内)でなければ、原則として高さ250m未満の空間を自由に飛ばせる、と決められていました。

しかし、2015年4月、首相官邸の屋上に放射性物質入りの容器が取り付けられたドローンが落下した事件を受け、ドローン規制の必要性が叫ばれるようになります。ドローン規制の法整備が進んでいる米国や欧州に合わせる形で、目視外飛行や人口集中地区上空での飛行などについて規制の必要性が検討され、同年9月、改正航空法が参院本会議で可決、成立しました。

ドローンの定義

同年12月10日から施行された改正航空法では、ドローンを、遠隔操作や自動操縦により飛行できる無人の飛行機やヘリコプターと定義。空港周辺や人口集中地区、イベントなど多くの人が集まる上空などでの飛行を原則禁止としました。同時に、制限高度も150m未満となりました

航空法第2条

(定義)
22 この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。

日本でドローン(無人ラジコンヘリ)が使われるようになってから約30年経って、ようやく小型無人機の定義が明確になされたわけです。

制限される飛行区域

原則禁止とされる飛行区域については、航空法132条と省令で細かく定められています。

具体的に見ていきましょう。

(引用元:http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html)

まず、これを守らないとかなり危険ですよ、という空域について、A区域~C区域の3つが指定されています。

空港周辺(A区域)

各空港では、「進入表面」や「水平表面」などの「制限表面」がかなり細かく設定されており、その範囲内において飛行できる高度が厳格に決められています。

(引用元:https://www.naa.jp/jp/airport/regulation.html)

こちらは成田空港の制限表面について示された資料です。真ん中の滑走路から、何段階もの制限表面が色分けされて示されています。たとえば、赤色の「水平表面」は、滑走路(正確には標点)から半径約4kmの範囲と定められており、この区域においては制限高度が45mとされています。空港周辺は離着陸する飛行機が低高度で飛び交うため、航空機の運航に影響が出ないよう、他区域よりも制限高度が低く決められています。

裏を返せば、空港周辺であってもそれぞれの制限表面で定められた高度さえ守れば、ドローンを飛行させることは法律上許可なく可能です(人口集中地区など他の規制に触れる場合を除く)。ですが、操縦ミスや機体の不具合などにより、数百人が乗っている航空機の進路を妨げたり接触したりすることがあれば、大事故につながりかねません。制限高度45mであれば空港の展望台から写真を撮るのと変わりませんし、極力空港周辺ではドローンの飛行は控えた方が無難です。なお、空港周辺における制限高度より上空の飛行であっても、空港事務所の許可を得ている場合はこの限りではありません。

上空150m以上(B区域)

上空150m以上の空域は、航空機やヘリコプターなどの有人航空機の航行に影響を及ぼすおそれがあるため、原則禁止となっています。この空域でどうしても飛ばす必要がある場合は、管轄する空港事務所の許可が必要です。事前に空港事務所に申請して許可を得ることで、飛行することが可能です。

ここで注意なのが、「150m」の基準です。国土交通省では、「地表または水面から150m以上の高さ」としています。山の場合も地表にあたりますので、たとえば山頂からドローンを飛ばす場合には、山頂の位置から上空150mまで飛ばすことが可能です。ただし、水平飛行させる場合には斜面に沿って高度を下げ、「地表から150m」の高度を守る必要がありますので注意が必要です。

人口集中地区(C区域)

都市部など人口が一定程度密集している地域では、ドローンの墜落によるリスクが高いため原則飛行できません。人口集中地区のことを、英語名”Densely Inhabited District”から「DID地区」とも呼ばれています。日本の国勢調査において、人口密度が4000人/㎢以上の基本単位区が隣接し、かつ人口5000人以上のエリアなどがDID地区とされています。

国勢調査は5年に1度行われており、現在のDID地区は平成27年調査の結果から選定されたエリアで運用されています。DID地区は様々な閲覧サービスが提供されていますが、国土地理院のものがメジャーです。→地理院地図「人口集中地区H27年(総務省統計局)

関東地方を示したものですが、地図中の赤いエリアがDID地区です。関東地方はほとんど許可なしに飛行できないことがわかります。150m未満の高さであっても、空港から離れていても、DID地区内での無許可でのドローン飛行は原則禁止されていますので注意が必要です。

「え、じゃあドローン買っても意味ないじゃん!」と思われた方。大丈夫です。一定の操縦訓練を済ませて国土交通省にきちんと申請すれば、DID地区での飛行許可はもらえます。空港管制が関わってくるA,B区域より申請も簡単です。

以上、A~C区域で飛行させる場合には、国土交通省の「許可」が必要になってきます。このほか、飛行方法によっては、「承認」が必要なケースもあります。

制限される飛行方法

 

次に該当する飛行方法は、国土交通省への申請を通して「承認」を得なければ原則禁止とされています。

(引用元:http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html)

夜間飛行

夜間の飛行については、日中に比べてリスクが増すため無断で飛行することはできません。ここで言う「夜間」とは、日没から日の出までの間のことで、地域によって時間帯は異なります。日の出、日の入りの時間の基準は、国立天文台が発表したものとされているので、明け方や夕方に飛行する際には、事前に国立天文台のHPから飛行させる地域の日の出、日の入りの時間を確認しておきましょう。→国立天文台「各地のこよみ」

夜間では、無人航空機の位置や姿勢だけでなく、周囲の障害物等の把握が困難になり、無人航空機の適切な制御ができず墜落等に至るおそれが高まることから、航空法第 132 条の2第1号により、日中のみ(日出から日没までの間)の飛行に限定することとしている。ここで、「日出から日没までの間」とは、国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間をいうものとする。したがって、「日出」及び「日没」については、地域に応じて異なる時刻を表す。

(引用元:http://www.mlit.go.jp/common/001110203.pdf)
―無人航空機に係る規制の運用における解釈について(国土交通省航空局)より―

目視外飛行

目視外飛行とは、読んで字のごとく、機体を直接見ないで飛行させることをいいます。ドローンには小型カメラが備わっているものが多く、カメラから送られてくる映像を手元で見ながら操縦するケースも「目視外飛行」にあたるとされています。操縦者以外の補助者だけによる目視や、双眼鏡などを用いた目視は「目視外飛行」になります。

「目視」とは、無人航空機を飛行させる者本人が自分の目で見ることをいうものとする。このため、補助者による目視は該当せず、また、モニターを活用して見ること、双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため「目視」にはあたらない。

(引用元:http://www.mlit.go.jp/common/001110203.pdf)
―無人航空機に係る規制の運用における解釈について(国土交通省航空局)より―

30m未満の飛行

ドローンは原則、人や物(法律上は「物件」と言う)から30m以上離れて飛行させなくてはなりません。やむを得ず30m以上離れられない飛行をする場合には、事前の承認が必要となります。ここで言う「人」には操縦関係者(操縦者や補助者)は含まれず、いわゆる「第三者」のことを差します。物件の場合、基本的には「人工物すべて」と覚えておけばOKだと思います。木などの自然物は該当しません。

○「人」とは、無人航空機を飛行させる者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者をいう。
○「物件」とは、次に掲げるもののうち、無人航空機を飛行させる者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)が所有又は管理する物件以外のものをいう。
 a)中に人が存在することが想定される機器(車両等)
 b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物

具体的な例として、次に掲げる物件が本規定の物件に該当する。
車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等
工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等
※なお、以下の物件は、本規定の趣旨に鑑み、本規定の距離を保つべき物件には該当しない。
 a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。)
 b)自然物(樹木、雑草 等) 等

(引用元:http://www.mlit.go.jp/common/001110203.pdf)
―無人航空機に係る規制の運用における解釈について(国土交通省航空局)より―

イベント上空飛行

祭りやお花見などのイベントは多くの人が集まるため、DID地区に該当しない場所での開催であってもリスクが高く、飛行が制限されています。何をもって「イベント」と言うかは曖昧なところですが、ある同じ目的を持って十数人以上が集まっていると「イベント」と判断されやすいようです。あくまで「落下すると人に危害を加える可能性が高い」ことが規制の背景なので、これが4~5人など仲間内での集まりは「イベント」とは言わなさそうです。自然発生的な人混みの上空はこれに当てはまりませんが、万一のリスクを考え、人の上空でのドローン飛行は避けましょう。

どのような場合が「多数の者の集合する催し」に該当するかについては、催し場所上空において無人航空機が落下することにより地上の人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうか、また、主催者の意図等も勘案して総合的に判断される。具体的な事例は次のとおりである。
○該当する例:
航空法第 132 条の2第4号に明示されている祭礼、縁日、展示会のほか、
プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート、
町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為) 等
○該当しない例:
自然発生的なもの(例えば、混雑による人混み、信号待ち 等)
なお、上記に該当しない場合であっても、特定の時間、特定の場所に数十人が集合している場合には「多数の者の集合する催し」に該当する可能性がある。

(引用元:http://www.mlit.go.jp/common/001110203.pdf)
―無人航空機に係る規制の運用における解釈について(国土交通省航空局)より―

危険物輸送

これは個人レベルではほぼ関係がない事項かと思います。火薬類や高圧ガスなどがこれにあたります。ドローンやカメラに付属する電池は「危険物」には含まれません。

物件投下

これも個人レベルではほぼ関係がないと思います。現在、ベンチャー企業などが山間部での医薬品の輸送などを実験していますね。ドローンの可能性を感じさせてくれる分野です。

以上6点の飛行方法を取る場合には、国土交通省の「承認」が必要となります。

違反すると罰金50万円以下で前科がつく

もしこれらに違反してドローンを飛ばした場合、航空法違反で罰金50万円以下が科せられます。航空法違反は刑法犯ですので、前科がつきます。「知らなかった」では済まされず、趣味で飛ばしていただけのつもりが刑法犯罪者になってしまう可能性があります。法令の知識を知らずにドローンを飛ばして重大事故を起こすケースが増え続ければ、今よりも規制が厳しくなり、ますます飛行が難しくなっていくでしょう。そうならないためにも、操縦者1人1人が法令を理解して安全な飛行を心がけたいですね!

航空法
(無人航空機の飛行等に関する罪)
第一五七条の四 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第百三十二条の規定に違反して、無人航空機を飛行させた者
二 第百三十二条の二第一号から第四号までの規定に違反して、無人航空機を飛行させた者
三 第百三十二条の二第五号の規定に違反して、無人航空機により同号の物件を輸送した者
四 第百三十二条の二第六号の規定に違反して、無人航空機から物件を投下した者

200g未満のドローンは航空法の規制対象外

これまでご紹介してきたドローンに関する規制ですが、航空法施行規則では、200g未満のドローンは規制の対象外と定められています。ここで言う重量は、本体+バッテリーの重量です。本体重量のみではないので注意しましょう。

200g未満のドローンについては引き続き「模型航空機」に分類されることから、「トイドローン」(おもちゃのドローン)と呼ばれることもあります。トイドローンは安価で手軽に利用できるため、ドローンがどのようなものか入門として触ってみるのもいいと思います。一方で、トイドローンの多くはGPS機能やセンサー類が備わっておらず、操縦が安定せずに難しい面もあるので、初めての場合は屋内で腕ならししてみることをオススメします。

航空法施行規則
第五条の二 
法第二条第二十二項の国土交通省令で定める機器は、重量が二百グラム未満のものとする。
(参考:航空法第2条22項

屋内も規制対象外

屋内についても、これらの航空法の規制の対象にはなりません。自分の住んでいる場所がDID地区であったとしても、屋内ならば許可は不要です。ここで言う「屋内」とは、ドローンが外に逸脱しないよう四方を囲われている場所のことを指します。なので、四方や上部がネットで囲われた場所や閉め切った倉庫内なども「屋内」にあたります。ドアが開いていたり、囲われていない範囲があるなど、密室状態じゃない場所は「屋内」に当たりません。

Q5-5 ゴルフ練習場のようにネットで囲われたようなところで飛行させる場合も許可が必要ですか。
A 無人航空機が飛行範囲を逸脱することがないように、四方や上部がネット等で囲われている場合は、屋内とみなすことができますので、航空法の規制の対象外となり許可は不要です。

(引用元:http://www.mlit.go.jp/common/001218182.pdf)
―無人航空機に関するQ&A(国土交通省航空局)より―

まとめ

ドローン操縦をする上で欠かせない航空法の知識。これだけは知っておくべきことをまとめます。

 

①規制は、200g以上のドローンを、屋外で飛行させる場合にのみ適用される

②空港周辺の一定以上空域、150m以上の空域、DID地区での飛行は許可が必要

③夜間飛行、目視外飛行、第三者や人工物から30m未満の距離での飛行、イベント上空飛行などは承認が必要

④航空法に違反すると罰金50万円以下が科せられ、前科もつく

 

ルールを守ってドローンフライトを安全に楽しみましょう!

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